オラトリオ初演Hooglied

6月11日にベルギー・ヘンクで、6月18日にルーヴァンの教会にて作曲家Sybrand Maertensによるオランダ語のオラトリオ「Hooglied in Zang en Zand」(雅歌、歌と砂の中で)が初演されました。編成は、花嫁(ソプラノソリスト)、男声合唱、女声合唱、オルガン、トロンボーン、エレクトロニックギター、そして砂アーティストImmanuel Boieさんによるライブパフォーマンス。

かなり大掛かりなプロジェクトで、フランダース政府(ベルギー・オランダ語圏の政府)、ルーヴァン市、ヘンク市、UitPAS(ルーヴァンの生活が苦しい人たちが芸術を楽しむための団体)等から助成金を取っていたようです。 合わせて120万円ぐらいの助成金が取れました…!(凄い)

私はソリストとして、花嫁役を歌いました。 :) 実はこのプロジェクトは今年最大の挑戦でした。 オランダ語を母国語とする合唱団の前で、ソリストとしてオランダ語で歌うことは初めてでしたから。 現代作品の初演という事で、とにかく現代曲の経験豊富な歌手を探している中で、私に決まったみたいです。あと、私はベルギーではオランダ語圏に住んでいるので、オランダ語の勉強をしていました。そういった過去の自分の経験のおかげで、また新たな世界へ踏み出すことが出来ました。 :)

プロジェクトを終えて分かったこと。オランダ語は発音の基礎さえあれば、意外と歌いやすい言語。私の中ではナザールや曖昧母音の多いフランス語よりはるかに歌いやすかったです。一番の難関はやはりGの子音ですが、歌うときはそこまで気にしなくて良いみたいで、一安心>< (このGの子音は喉の奥を摩擦させて発音する「ヒュ」と「グ」が混ざったような音です。。喉に詰まった食べ物を優しく戻そうとする時の音です。。)

Hoogliedとは、「雅歌」の事です。雅歌とは、男女の恋の歌としてヘブライ聖書の中に組み込まれた一遍で、英語でいうところの”Song of Songs”、歌の中の最高の歌、という意味です。詳しくはウィキペディアで

私が小さい時から通っている日本の歯医者さんは言語に関してとても博識で、検診に伺うたびに、古い英語の文献などを見せてくれていました。特に私がベルギーに留学してからは、オランダ語と古い英語のスペリングの関係性(長母音はどちらも母音を二つ書く等。例 : Breeth (=breathe, Middle English), Bezweer (懇願する、Dutch)) などを治療しながらお話してくれました。 それから何となく、私の中でオランダ語=奥ゆかしい、といったイメージがあったのでした。

なので、個人的なオランダ語に関する語感のイメージやこの作品に対する感じ方も、すでに持っていました。もちろん私だけでなく楽器奏者、合唱団メンバー、指揮者、各々がそれぞれの母国語であるオランダ語のイメージを持っていたはずです。 今回のプロジェクトはまさにフランダースの作曲家と合唱団による、フランダース政府の助成金による云わば「国産」の演奏会でした。そういう意味で、外国人の私に重大な役目を任せて下さった事が、光栄でなりません。

今後ももっと見聞を広めて、様々な文化に臆せず飛び込める歌い手になりたいです。 ビデオが届いたら、このホームページ上でシェア致します。 :) オランダ語のオラトリオ、ぜひ多くの方に聴いていただきたいです!