日本での演奏会情報3 7月28日オペラ『プラットホーム』/高橋宏治
Article info
Noriko Yakushiji
オペラ『プラットホーム』/高橋宏治(日本初演・新演出) 全1幕5場(予定上演時間:1時間)〈英語上演/日本語字幕付〉 https://nezumi.tokyo/plathome
テロに関わる男女4人。実行犯、ニュースキャスター、生存者、そして犠牲者。 それら4つのキャラクターをひとりで演じる群像モノオペラ。 私たちはわかりあえるのか。 若き才能が集結し世界に発信する新作オリジナルオペラ日本初演。
公演日程
全2回公演
2021年7月28日(水)杉並公会堂小ホール - 昼公演 14:00 開演(13:30 開場) - 夜公演 19:00 開演(18:30 開場)
チケット
(自由席 3,000円)
スタッフ・キャスト
【作曲】高橋 宏治 【演出】植村 真 【脚本】Stefan Aleksić Yannick Verweij 【美術】岡 ともみ 【ソプラノ】薬師寺 典子 【指揮】浦部 雪 【フルート】山本 英 【クラリネット】笹岡 航太 【ヴァイオリン】松岡 麻衣子 【ヴィオラ】甲斐 史子 【チェロ】山澤 慧 【打楽器】牧野美沙 【舞台監督】小田原 築 【字幕翻訳】田口 仁 【音響】増田 義基 【録音】元木 一成 【ヘアメイク】髙橋 優子 【プロデュース】進藤 綾音 【記録】屋上
主催:nezumi 助成:公益財団法人朝日新聞文化財団
あらすじ
とある地下鉄の駅で爆破テロが起こる。本作では、このテロ事件に巻き込まれた人々とテロリストの姿が多様な角度から描き出される。元警察官の女はテロの現場でパラノイアに陥り、テロリストの男は移民として味わった苦境を噛み締め決断をくだす。ニュースキャスターの女は排外主義を露にし、移民の女はテロに遭遇する直前に電話で故郷の母親に都市の自由を語る。ラストシーンでは、この世ならざる場所で冥界へ旅立ちを待ちながら、犠牲者の少女とテロリストの男が終わりのない対話を続ける。それぞれの世界に囚われた登場人物たちの姿は、この社会の矛盾と互いが理解し合うことの困難さを露呈させるだろう。だが、ラストシーンで交わされる犠牲者とテロリストとの対話はどこにも辿り着かないままに開かれており、その行方は観る者の方に託されている。
“PLAT HOME” とは
本作は2020年にベルギーで初演されたモノオペラ《Amidst dust and fractured voices》の日本上演版ですが、この再演にあたり日本版では《Plat Home》とタイトルを改めています。この改題には、コロナ禍の中で重ねられた制作者たちの議論が反映されています。本作では、実在の爆破テロ事件をモデルにした架空のテロ事件と社会的な分断が主題となっていますが、それはテロが頻発し政治的な分断が進む欧州の状況を背景としたものでした。幸いなことに――少なくとも表面的には――、近年の日本ではそのような悲劇は起きていないように思えます。しかし、このコロナ禍では、日本でもすでに物理的な意味で人々は分断された生活を送ることを余儀なくされており、やはりその中では様々な社会的矛盾が露になったのではないでしょうか。だとすれば、劇中で事件が起こる「Platform」は、小さな区画に「区切られた」(Plat)、私たちの「家」(Home)にも重ねられるでしょう。この《Plat Home》というタイトルによって、テロ事件という特殊な主題は、今や我々にとって普遍的な問題とも寓意的に結びつくはずです。